( 「産経新聞」三重版・平成17年9月14日)
去る8月23日、文部科学省は平成19年度から「全国学力テスト」を復活させる方針を固めた。テストの対象となるのは、公立学校の小学6年生と中学3年生で、国語、算数などの主要教科に絞り、一学期に実施する予定という。すでに昨年の11月、中山文科大臣は同テストの復活の方向を示唆していたが、早くも来年度には「施行テスト」が開始される。時代は急速に変化しつつある。そろそろ児童・生徒や保護者、あるいは教育関係者は、それに備えた”心の準備”くらいは、しておいたほうがよさそうである。予定どおりに実施されれば、昭和39年度に廃止されて以来、なんと40年ぶりの復活となる。
そもそも、昭和36年に開始された中学生を対象とする「全国一斉学力調査」を、廃止に追い込んだのは、日教組である。反対の理由は、「序列をあおる」「競争をまねく」などであった。そして、約40年後の現在、日本の子供たちの学力はどうなったか?昨年11月に発表されたOECDの「生徒の学習到達度調査」は、世界の子供たちの学力を調査したものであるが、それによれば、たとえば日本の子供の「数学的応用力」はトップから6位に転落している。
国語力の低下ぶりも無残で、大学生の3人に2人が「憂うる」の意味がわからない。今の日本の大学生の多くは国語力の点で、「外国人留学生よりも劣る」というのだから、もう・・・、お話にならない。
かつて健全な「序列」と「競争」を排除した共産主義国家は、国家ごと崩壊せざるをえなかった。その”悪平等”による悲惨な過ちを、現在の教育界は、そのまま繰り返しつつある。
そういえば、今年3月のこと・・・、私は不思議な御縁により、東京で国政の中枢にある方々に私なりの教育改革案を提出する機会があった。そのとき私は、坂本竜馬「船中八策」ならぬ「教育改革私案・急務5か条」と題する一文を草してお渡ししたが、その中の「全国共通テストの実施と結果の公開」で、私はこう書いている。
「”全国共通テスト”は”学習指導要領”に則して実施し、その結果は詳細に”公開”する。すなわち、どの県が、どの市町村が、ひいては、どの学校が、それぞれどのような教育成果をあげているのか、一目瞭然にするのである。これによって、”誰が税金を有効に使っているのか”、逆に”誰がムダに使っているのか”、それが明瞭になる・・・」。
公教育は”税金”でまかなわれているのであるから、むろん納税者には、それが、費用にふさわしい効果をあげているか、チェックする権利がある。「全国学力テスト」によって、全国の納税者は約40年ぶりに、そのための確かな指標を手にすることができるはずである。