「皇學館学園報・第62号」(平成28年6月20日)
安倍総理が主催し、東京の新宿御苑で行われる「桜をみる会」というものがある。その招待状が自宅に届いた…と言い触らしていると、「ならば、その報告を書いてください」と言われたので、以下、簡略に記す。
四月九日、朝八時、知人たちと「大木戸門」の前に集まり、開門を待った。俳優の草刈正雄さんが、私たちより早く来て、開門を待っていた。
内閣官房参与・飯島勲さんの姿を見かけたので、ご挨拶をし、開門と同時に苑内に入る。
すると、たまたま旧知の国会議員と会ったので、「○○くん、どうです」と訊くと、「走りまわっていますよ」と笑顔でおっしゃる。
「○○くん」は、三月に卒業したばかりの私のゼミの男子で、四月からその議員の秘書をしている。
「それでは・・・もっと走り回らせてください」と言っておいた。
ソメイヨシノは散りかけていたが、八重桜は満開に近く、幸い天候にも恵まれた。
つぎつぎと芸能人やスポーツ選手たちが到着して、人々はシャッター音を響かせ始める。近頃私は、テレビが嫌いになり、あまり見ないが、それでも“ナントカ48”など…、“どこかで見たような人たち”が、たくさん歩いている…ということくらいはわかった 。
翌日の報道によれば、参加者は一万六千人にもおよんでいる。総理の挨拶や、明恵夫人の乾杯の発声は、マイクを通して聞いた。酒はでない。
そのかわり、たくさんの屋台が出ていて、食べ物や飲み物には不自由することはない。
帰ろうとすると、官房長官・菅義偉さんの前に行列ができている。一緒に写真を撮ってほしい、と求める人たちの行列である。
菅さんが、人のよさそうな笑顔で応じていた。
門を出ようとすると、「朝ドラ」などで有名な「子役」たちが、三人で手を繋いで歩いていて、それが、とてもかわいらしかった。
しかし、門を出た後、問題が発生した。
なにしろ一万六千人が、一斉に「はける」ので、タクシーが、なかなかつかまらない。私は、すぐに伊勢に駆け戻り、その日の午後、千葉県からバス四台で、参宮におこしになる方々に、講演をする約束をしていた。
焦燥感に駆られながら、しばらく私は、御苑の周りをあてどなく彷徨っていた。 (おわり)