西郷隆盛の書いた四十一条の遺訓、これに追加の遺訓「二条」とその他の問答、補遺を加えた「西郷南洲翁遺訓」。手紙や漢詩など、西郷さんの残した史料はあまたあるが、著書となるとこれのみだ。
本書はその全てに改めて丁寧な解説を加えた。遺訓の解説本や複製本は沢山あるが類書との違いは「政治の教え」「時代の教え」「事業の教え」「人生の教え」などの四項目で遺訓をインタビュー風に再構成。西郷さんの教えを極めて平易にまとめ、読みやすさを重視した。また時局の様々な出来事を引き合いに出しながら、「もし西郷さんが生きていたら・・・」「西郷さんは一体、この問題をどう捉えるだろうか」と今に西郷さんを蘇らせる工夫もおもしろい。“代表的日本人”として私たちを今なお引きつけてやまない西郷さんの珠玉の名言の色あせぬ魅力を痛感する。
(『正論』 平成21年3月号)