「占領という暴風雨」は、皇室をお守りするためのしくみを、さらに吹き飛ばしつづけます。すでに三つあげましたが、第四は、皇室財産の没収です。
当時、三十七億円もあった皇室の巨大な資産が、国庫に没収されました。ですから、それまで福祉事業などに支出されていた「御内帑金」 (「ごないどきん」、つまり、皇室のポケット・マネー)も、ほぼ支出できなくなります。
たとえば、明治天皇の皇后・昭憲皇太后は明治四十五年、国際赤十字社に、そのころの金額で十万円も下賜されていますが、それも「御内帑金」があればこそ、できたことでした。つまりGHQは、皇室に慈善事業を、できないようにさせたのです。
それは、なぜでしょう?
私には、“国民の心を皇室から離すため"としか思えません。
ちなみに今も、宮家の方々には「健康保険」がありません。医療費も全額自己負担です。今は亡き三笠宮寛仁親王殿下が、各地で講演をされて、御自身のガン治療の費用に充てられていたことは、よく知られています。
ならば国民が「ご寄付を…」と思っても、法律上、国会の同意がなければ、皇室に寄付することはできません。 「ガンジガラメ」です。
第五にGHQは、皇室につながる国民文化を破壊しました。学校、公的機関から、「教育勅語」をはじめ、皇室と神道につながるものが、徹底的に排除されます。
また、皇室に関係する祝祭日の名称も変更、もしくは廃止されました。たとえば、明治天皇のお誕生日である「明治節」は「文化の日」にされ、「新嘗祭」は「勤労感謝の日」にされます。
神武天皇の御即位に由来する「紀元節」にいたっては、廃止されてしまいます。 その日が「建国記念の日」として復活したのは、昭和四十一年になってからのことです。
以上、「占領という暴風雨」の具体例を、四つ上げましたが、他にも重大なことがあります。 「不敬罪」の廃止です。
これは、共産主義者がGHQにはたらきかけて実現させたことですが、それによって、皇室に対する誹謗中傷は、“野放し状態〟になりました。今もオールド・メディア(新聞・テレビ・週刊誌)、あるいはネットなどでは、皇室に関する真偽不明の情報が流されつづけていますが、もしも、それが完全な捏造であったとしても、彼らには何のペナルティーもないのです。
一国民でさえ、捏造報道で誹謗中傷されたら、「名誉棄損」で訴えることができます。それなのに「日本国の象徴」である天皇にかぎっては・・・また皇族方にかぎっては、そのような捏造報道が行われても、ひたすら黙って耐えるしかない・・・というのは、どう考えても、ヒドすぎる話ではないでしょうか。
要するに、戦後の日本では、皇室を支える制度的、経済的、思想的な仕組みが、〝壊滅的な被害〟を受けたのです。
昭和天皇も上皇陛下も、政界、官界、学界、言論界、教育界、司法界などに数多くいる「反天皇思想」の人々による「攻撃」に、ほぼ独力で立ち向かってこられたわけですが、今は今上陛下が、それらの人々の「攻撃」に、ほぼ独力で立ち向っていらっしゃいます。(つづく)