(「THEMIS」・ 2004年7月号)
組織率20%でも反省なし
違法な勤務や父母がさしとめを申請するほどの性教育など異常ぶりは変わらない 「年休詐取」が3年で8億円も 「学校現場の日教組支配は終わった」
教育界からはこんな声が聞こえてくる。確かに全国平均では日教組の組織率は20%台にまで落ち、今も減少傾向で、「教育基本法の改正を唱える保守派のなかにも、日教組問題を軽視する人が増えてきた」(全国紙記者)という。
だが、本当に日教組問題は過去の話になってしまっているのだろうか。確かに、教師の80%を組織していた昭和30年代の勢いは今やない。だが、例え全国平均の組織率を減らしても、日教組はあの手この手を使ってがっちりと教育現場は支配しているのだ。その一つが教頭ポストを押さえることだ。
実は日教組は「労働組合」ではない。法律上は、都道府県ごとの教育公務員で組織される「職員団体」の総称にすぎない。本来はイデオロギー闘争などやるべきではなく、「勤務条件の維持改善」に専念すべき団体なのだ。だが、周知の通り、日教組は’47年の結成以来、一貫して社会党(現社民党)と連携を保ちつつ、極めて露骨なイデオロギー団体としての性格を持ち続けている。
日教組問題は大きく二つに分けられる。「違法な勤務」と「異常な教育」である。「違法な勤務」を代表するのが、「勤務時間中の組合活動」である。これは、学校で勤務していたように見せかけて実は組合の仕事をし、それでいて勤務していたのと同じ給与を貰うという不正だ。「公金の詐取」である。
’99年には、広島で「破り年休」が発覚している。これは、まず学校へは届出をだして「年休」をとった形にして「組合」に行き、翌日に学校へ戻るとその年休の届出を破って、なかったことにする。年休を減らさない工作であり、校長の黙認のもと行われていた。「それ以後、全国各地で続々と同様の不正が明るみに出た。例えば同じく’99年に、三重県で広島を上回る大規模な不正が曝露された。三重県教育委員会の調べによれば、過去3年に限っても延べ3万2千人、これは県下の全教職員の3分の1が不正勤務を行ったことになる。その不正勤務は、延べ68万時間に及んでいる」(社会部記者)
この調査を受け、三重県では教育長以下800人ほどの管理職が処分を受け、三重県日教組は県に8億円を「寄付」し、同時に委員長も辞任に追い込まれた。ここでいう「寄付」とは、詐取金の返還だ。「日教組が最後まで自らの非を認めなかった」(関係者)ため、苦肉の策で「寄付」という形になったのだ。「破り年休」問題はその後、東京、神奈川、北海道、兵庫など、全国各地で発覚した。北海道では「鉛筆年休」などといわれ、届出を鉛筆で書いて後で消すという手口だった。三重県に限っても過去3年間で8億円の被害である。全国で戦後数十年にわたって考えると、国民の血税はいったいどれだけ日教組に詐取されていたのか。
もう一つの問題が、「異常な教育」である。日教組が「平和教育」、「人権教育」に名を借りて、「反日自虐教育」を進めていることはよく知られているが、その他にも無数の偏向教育メニューがある。それは「反国家・国旗」、「反天皇・元号」、「反企業・反原発・反自衛隊」教育であり、逆に積極的に進めているのは「日本国憲法の神格化」、ジェンダーフリーという名の「性別否定教育」、「異常な性教育」がある。
性教育に異常な執着を見せる 特に性教育については、呆れるような例が何件も報告されている。例えば今年の3月には、横浜市の小学校での性教育が話題になった。1年生で性器の名称、3年生で性交の図解と進み、6年間でなんと150時間が性教育に費やされている。なぜ性教育にそこまで時間を割くのか。その背後には今も厳然として存在するマルクス主義がある。
エンゲルスは、一夫一婦制を「歴史に現れる最初の階級対立」としている。その発想は、やがて家庭を破壊すべき対象とみなすようになり、さらに「フリーにセックスし、フリーに出産し、生まれた子どもは皆で育てる」という社会を夢想するようになる。日教組は、そのような思想の影響を受けている世界的にもが数少ない団体の一つなのだ。
教育界の関係者はいう。
「日教組がフリーセックスを助長しこそすれ、性規範や性道徳を本気で教え、家庭を守る教育をする気がまったくないのは、こうした思想的背景がある」
冒頭でも述べたように、日教組の組織率は全国平均では減少している。だが、地域によって大きなばらつきが見られる。少し古いデータになるが、’97年の調査によれば、社民党系の日教組と共産党の全教(全日本教職員組合)を合計した組合加入率が、40%を超えている地域は、次のとおりである。
北海道、岩手、秋田、山形、茨城、千葉、
神奈川、新潟、富山、石川、
福井、山梨、
長野、静岡、愛知、
三重、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、広島、佐賀、
大分、沖縄(太字は加入率60%以上の県)
先の「勤務時間中の組合活動」が三重県で多く、「異常な性教育」が神奈川県で顕著に見られる理由が、この一覧からわかる。
このような地域では、教育の方向性に疑問を感じた保護者が日教組に批判の声を上げたとしても、ほとんどの場合は校長の段階で握りつぶされる。かといって教育委員会に訴えても無駄である。校長も教育委員会も「日教組あがり」だからである。そういった地域では、自民党の政治家まで日教組寄りに動くことがよくある。
今年3月、三重県に住む生徒の母親らが、「異常な性教育の差し止め」を求める請願書を県議会に提出した。だがその県議会だは、自民党の反対多数によって否決されている。
「いいかげんにしろ日教組」の著者である、皇學館大学の松浦光修助教授(文学部)はいう。
「三重県の日教組は1万4千人、その家族、親戚、教え子などを入れれば集票力は巨大宗教団体並になる。そもそも教育公務員の選挙活動は法律で厳しく禁止されているのだが、なぜか三重県では日教組の選挙活動に対し、警察の取り締まりは甘い」
こうなると、もはや抵抗できる力はない。三重県では日教組の組織率が98%を誇り、非組合員が存在しないといってもいい。’03年に、尾鷲市の教育長が教科書選定をめぐる贈収賄で逮捕されるという事件が起きた。この教育長も校長出身者であり、三重県の日教組の元書記次長であり、おまけに尾鷲市長の親戚でもあった。
三重県に限らず、日教組の組織率が高い地域では、今でも日教組の役員を務めることが校長や教頭へのエリートコースである。非組合員の教師は、管理職になれる可能性はない。
児童に土下座させられた校長 それでは、組織率が低い地域はどうか。すでに東京都では「教育改革は東京から」という石原都政の下、日教組の活動は壊滅的といわれている。
だが’00年、国立市の小学校で、卒業式に日の丸を掲揚しようとした校長に、児童が土下座を要求するという事件が起きた。東京都でも国立市は特別で、地域の組織率は80%だ。この校長は組合員ではなかったが、教頭以下の教師がすべて組合員だった。
たとえ有能な校長であろうと、そのような日教組の組織率が高い地区に赴任すれば、子どもを使った糾弾を受けることになる。もちろん、児童が自発的にそこまで過激な行動をとることはない。児童にとって、教室で常に触れ合い影響を受けるのは校長ではなく、担任などの教師だ。そして教師と校長を結び、校内の連絡役として機能しているのが教頭である。
日教組は、学校の実務を事実上握っている教頭を押さえることで、それ以下の教師をほぼ自動的に支配できる。そうやって、子どもを使って日教組の教えに反する校長を糾弾させるのだ。
組織率60%を超える神奈川県出身のジャーナリストが語る。
「そのうち校長のなかにも、そういう教頭を利用して学校を治めようとする人が現れてくるだろう。双方の思惑が一致している」
前出の松浦助教授はいう。
「教育改革が盛んにいわれているが、日教組問題を避けて通る教育改革などすべて欺瞞で、この問題を直視しない議論はすべて”逃げ”だ。解決方法はいたって簡単で、教育現場に自由化と民営化の風を吹き込めばいい。競争も淘汰もないから、癒着や腐敗が進む。子どもたちや保護者に選択の自由を与えるべきだ。ダメ学校は潰れ、ダメ教師は辞める。一般社会では当たり前のことだが、教育界だはまだまだ行えない。そこに現在の病根がある」
日教組問題を直視し、教育改革は急がなければならない。その悪しきシステムは、今日も日本の子どもたちを蝕み続けているのだ。